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天使のアルバイト-111-

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18
 
 彼女は目を開いた。視界にはベッドで仰臥し、ゆっくりと呼吸する少女があった。
 17歳。年齢相応にして健康そうな、やや細身の体躯を備えた、可愛らしい少女である。ただ、肌の色は白っぽく、髪の毛は金に近い茶色。
「由紀子ちゃん」
 彼女は友の名を呼んだ。でも、友の声を聞く前に、この場を去らねばならぬと判っている。
 なぜなら、自分は既に、この世界で生きてゆくための身体を失った。
「あなたは……」
 誰何する声があり、彼女はゆっくりと目を向ける。
 母親。彼女と共に最も強く由紀子を愛し、最も悲しんだもう一人の女性。
 この場で意識を維持している唯一の人間。
 彼女は母親の、その見開かれた瞳に映じた自分の姿を見る。それはさながら光で彩られ、描かれた人の身体。
 彼女本来の姿。
「わたくしは元々、人間の皆さんと共にいて、その心の相談役となるよう仰せつかっている者です。名をエリアと申します」
 彼女は言った。存在する次元の違いから、エネルギーの差分が光として現れ、自分から周囲に絶え間なく放射されているのが判る。そして、その光の発散する姿……オーラライトを、母親が“翼”という印象で捉えているのが判る。
「天使……」
 その言葉が、母親の口をついて出た。
「古来、人間の皆さんにはそう呼ばれてきました」
 エリアは頷いた。
「隠していて申し訳ありません。でも、それは、わたくしにそう名乗る資格がなかったのです。今回わたくしは、不正を犯し、皆さんと共に暮らすことによって、心の更正をなさいと命じられ、皆さんの元へお邪魔することになりました」
 エリアはそこで母親の手を取った。
 母親がハッと息を呑む。なぜならこの時、母親には、エリアの心が自分の心のように見え、把握できているからである。
「エリカちゃん……」
 

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