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天使のアルバイト-112-

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 その声に頷きながら、エリアは自らの心を見せる。自分の気持ち。見ず知らずの自分を助けてくれた家族の優しさ。そして、前途の見えない自身の運命を知っていながら、時々を、一瞬一秒を懸命に生きていた由紀子ちゃん。
 それに引き替え、その場さえしのげればいいやという安直な発想で不正に走った、永遠の命有する自分。
「全力で生きていなければ、全力で生きる人間さんの相談相手など出来ない……これが今回、わたくしの得た教訓であり、彼女からもらった最大の贈り物です」
 エリアは言い、母親から手を離した。
 示唆が来ているのを感じる。自分はもう、ここには、いられない。
「行ってしまうの?」
 母親が訊く。エリアの心が見えているから判る。
「せめて……由紀子が目覚めるまで……」
 エリアは首を横に振る。そして、横たわる由紀子の手を取る。
 温かい手。血の通う優しい女の子の手。
 
 生きている手。
 
「由紀子ちゃんごめん。私、あなたを裏切った」
 エリアは閉じられた瞼に向かって言った。
 母親がエリアに目で訊く。“それは、どういう意味?”
「私、ずっとあなたのそばにいるつもりだった。少なくともあなたにとって、私は最高の友達のつもりだった。
 でも、私は、私自身の責任で、あなたのそばにいられなくなってしまった。
 だけど、知っていて。私にはあなたが見えるし、あなたも私の声を聞くことは出来るんだよ。なぜなら私、この後もずっとあなたのココロのそばにいるつもりだから。
 だから……迷ったら、まずはあなたなりの答えを教えて。あなたの意志でまずは答えを出してみて。
 私はそれが違うと思うなら、違和感であなたに答える。
 あなたが何かをしたとき、良心が咎めたなら、それは私からの否定。
 そして……必要と思うなら、私はあなたに挑戦の機会を準備する。困難を用意する。
 あなたは考えるでしょう。必死になるでしょう。苦しむでしょう。
 逃げたいと思うかも知れない。
 でも、それを乗り越えたとき、あなたは知るでしょう。苦しむことが成功には必要なことを。
 そして、苦しむことによって“成長”することを。
 私は常にあなたのそばにいる。あなたを見て、あなたの成功を祈っている。
 あなたがより良くなれるように、私も考える。努力する。
 そう。姿は見えないけど。これからも、ずっと一緒。それは、約束する」
 

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