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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-103-

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 魔女たる彼女ならではの感応。
 その方角を見回すと、船首だけ出して漂う漁船の向こう。意思と感情持つ者。
「犬です」
『救え。座標出せるか』
 船長は即座に言った。それは人間ならコンピュータにパターンが記憶してあり、すぐ出るのだが。
「待って下さい」
 この場合は自分が“見れ”ば良い。PSCは自分の脳波を追尾して船のコンピュータに送っており、指示すれば瞳の動きに相当する分を抽出し、見ているものから距離を算出する。
 イヤホンがピンを出しタブレットに字幕。カメラが捉えたこれで良いのかyes/no。人間ではないので確認してきたのであろう。切り取られた画面の形状を指先でタップ。犬と確認してyes。
『捕捉した。距離72。ガレキ除却し接近せよ。レムリア、犬が恐怖なきよう努めよ。その上で犬が知ってる近隣人々の情報と、可能であれば……』
「探査犬の依頼ですね」
 レムリアは船長の意図を先読みして声にした。
『その通りだ』
〈今から行くから怖がらないでね〉
 心に直接声で送る。
〈うわ!人間なのにどうして喋れる?〉
〈そういうのもいるんだよ。助ける。どこにいる?声を上げて〉
 キャンキャンと表現される、甲高い悲鳴のような鳴き声。
〈ケガしてるの?〉
〈動けないんだ〉
“挟まれている”という単語は知らぬようである。が、建物の下敷きになっているという彼(オス犬)の、見たままの画像は受け取った。
 果たして漁船をぐるりと回り込むと、天地逆さで浮かぶ家があった。
『生命探知……日本式テーブルとでも言えばいいのか?足の短い机の下だ』
 船長が言った。それは和室で座卓の下敷き、という相原の認識で全体像に結びついた。天地逆さであるから、天井板と座卓に挟まれているということになる。
 

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