アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-105-
碓井君はラブを見、次いでレムリアを見上げた。
彼への答えは、うつむいて首を振るしかなかった。
「え……」
「彼にはそのことが判らないのよ……一緒にいてあげて」
碓井君は目に涙を浮かべたが。
「……判ったよ!」
「強いね。男の子だ」
イヤホンにピン。
「レムリア、あなた感じませんか?」
セレネが確認を要求する。レムリアはスクリーンを見た。傾いで漂う平屋家屋である。が、テレパス何も言って寄越さない。
遠いか弱いか。レムリアは甲板へ出ようとした。その時。
「これ桜井さんちじゃん」
「あ、本当だ。お姉ちゃん、習字の先生んちだよ」
「助けに行こうぜ」
子供達の方が先に動く。
「どうやったら外へ?」
子供達は書道教室の勝手を知っている。レムリアは確信を持った。
「右側の扉を開けます」
ドア・オープン・ライトサイド。英語で言ってイヤホンからピン。
これで船のコンピュータが即応。
操舵室右側、右舷昇降口が開く。
「ラブおいで。桜井のおばあちゃんを探すんだ」
〈探す?ああ、これ肉くれるおばちゃんの家だ〉
ラブはわん、と吠えた。
子供達と共に外へ出、昇降スロープの先端へ。
家屋は波間にガレキに埋もれるようにしてあった。圧力が加わっているとか、大きな質量のガレキ・船舶が接近している様子はない。
従って、ガレキ伝いに飛び移りながらたどり着けないことはないが。
どうやって……迷っていると。
『生命反応あり』
ハートマークがタブレット内家屋の位置に表示。
「了解。……桜井さんは生きてらっしゃるみたい」
「ラブ行け!」
対して、子供達は躊躇無かった。更に犬の体重は重くても10キロ20キロ。
容易に到達し、傾いで浮かぶ家屋の屋根で吠えてみせる。
「おばちゃーん!俺だ、晴人だ!」
「……碓井君かい?」
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