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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-110-

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 何が起きているのか。港湾内にはタンク等より燃料用油が流れ広がっていたことを考慮頂きたい。そこから生じたガスがこの住宅内に充満しており、プラズマの火の玉で引火したのだ。
 家屋が爆発する。風船の破裂の如き短時間の事象であったが、レムリアにはスローモーションの時間線にいるように見えた。屋根瓦に柱や壁、ガラスが、赤いガス状の生き物に押されてぐにゃりと曲がり、飛び散り、或いは折れ砕け、周囲に広がる。
 レムリアは両手両足を広げる。自分は耐環境ウェアを着ている。当たれば痛いが、刺さったり等の懸念はまずない。一方二人は所詮、遺体袋。
 自分以外の誰が盾になる。
 が、その前に爆風で吹き飛ばされる。
『レムリア!』
 相原の声。自分のセンサが“異常な加速度”を検出し、警報を発したに相違なかった。くるくる回りながら中空高く放り上げられ、次いでワイヤで腰をぐいっと引かれる。
 自分のワイヤと遺体袋を引いてるワイヤは別々のもの。
 だから大丈夫。レムリアが思ったこと。絡まったわけではない。
 ワイヤに引かれて身体の回転が止まり、風景がゆるやかに巡る。あちこち火柱の見える破壊された港湾。真下には炎に包まれ煙上げる民家。
 落下のフェーズ。背中から地上へ向かう。防護服を着ていても判る、轟たる風切り音。
『身体を丸めろ!』
 相原の声。言われた通りにする。飛行機で離陸前に説明される“安全姿勢”あれだ。
 何か大きな音があったわけでなく、白い膜に背中から落下し、膜が自分を受け止め、ぐにゃりと沈み、衝撃を吸収した。
 2,3回膜でバウンド。言わずもがな船の帆膜であった。広げられトランポリンよろしく自分を受け止めたのである。
『確認』
『レムリアピン押せ』
 耳の無線機1回ボタン押し。これで警報解除、兼、
 私は無事です。
「すいませんでした」
「レムリア!」

 

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