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2017年6月 7日 (水)

天使のアルバイト-113-

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 エリアは、浮かんだ言葉を、そのまま言った。
 受け売りでなく、よどみなく、言葉が浮かんだ。
 母親に目を戻す。
「お別れを言う時が来ました」
 母親の瞳が大きく揺らぐ。
「お母様」
 エリアは片膝を突き、その手を取り、母親を見上げ、敬意を持って呼んだ。
「はい」
「お伝えしておくことがあります。実は、私の身体は今、由紀子ちゃんのものになっています。これは本来、してはならないこと」
 エリアは言った。
 母親の中で、その目が捉えた現象と、エリアの言葉との一致が図られる。
 母親はエリアと由紀子の身体が燦然たる光に包まれ、その光が、エリアから由紀子向かって迸ったのを見たのだ。
 光の中にいたエリアは、その光を炎の壁と捉えていた。ただ、そのようなことは、ここで敢えて詳しく記述する必要はあるまい。
「じゃぁ、由紀子は、本当なら……」
 母親が訊いた。
「はい」
 エリアは頷く。そう、本来なら由紀子ちゃんはここで亡くなるはずであった。
 しかしエリアは奇蹟を起こしてしまった。超常の力を使って。
 彼女自身の身体、修行のために与えられた肉体を由紀子に譲った。
「彼女は今日、新たな人生を歩み始めます。全くゼロからの一歩です。しかし、私はもう、彼女に見せるべき姿を、身体を持ちません」
 母親はエリアを見ている。目と口をまんまるに開き、ただただエリアを見ている。
「いろいろとありがとうございました。このご恩は永遠に忘れません。どうかお父様や、店長さん、学校の先生にもよろしくお伝え下さい」
 エリアは胸に手を当て、深々と頭を下げて座礼し、立ち上がり、母の額に口づけた。
 母親から手を離す。と、同時に、視界に白い光が霧のように立ちこめ、やがてそれに満たされ、何も見えなくなる。
「さようなら」
 エリアは言った。視界だけでなく、自分の意識そのものも真っ白になって行く。
 幸せに蒸発する。そんな、感覚。
 

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