アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-116-
『中の方はどうしておられる』
「判りません。声を出せる状態ではありません」
『SAR』
船長が指示し、タブレット液晶に表示が出る。甲板上物体へのレーダ探査であり、詳細に見て取れる。
ユニット構造のトイレであった。
天井換気扇と、そこから繋がる排気ダクトが上からの力で押し込まれ、床面近くまでダクトが突き刺さっていた。そのダクトと壁の間に人体が挟まれている。何時間経過しているのか、洋式便器の上に立っている状態。
それは苦痛であろう。しかし見方を変えると、一体型の狭い空間とダクトの故に強度が保たれ、生存空間が確保され、ダクト経由で空気の供給が持続し、生き延びた。このことは、例えば家一軒の耐震補強はムリであっても、就寝空間やリビングの一部などにそうした構造を取り入れ、サバイバルゾーンとする方法が有効であることを示唆しよう。
『要救護者の対角線上を斜めに切り取れ。そこに力学的負担は掛かっていない』
船長の指示。ユニットバスを四角形で表現するなら、要救護者はその右上隅にいる形。
対する左下を斜めに切り取って救助空間を作る。この狭い空間でそれをやるのは?
「レーザーを下さい!」
レムリアは言った。光の刃で切り落とす。
『入らねぇぞ』
アリスタルコスの指摘。
「私が入って撃ちます」
『そうじゃねぇ。銃がデカい』
「ファイバアタッチメントを使え」
相原が言った。知らない名前にタブを見るととぐろを巻いた蛇のような機器。見たことがないが、相原は船のマニュアルを事細かに読んでおり、本来乗組員である自分よりも情報量が多い。
何に使うのか。彼の意識をテレパスでスキャン。
蛇のようなものは光ファイバの束。レーザガンの銃口に光ファイバの束を取り付け、直接届かないところへビームを送り届けるアタッチメント。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -12-(2024.09.18)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -020-(2024.09.14)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -019-(2024.09.07)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -11-(2024.09.04)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -018-(2024.08.31)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -12-(2024.09.18)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -11-(2024.09.04)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -10-(2024.08.21)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -09-(2024.08.07)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -08-(2024.07.24)
コメント