天使のアルバイト-119-終
しかし、その追放が、自分にあった“甘え”のよりどころを取り払うこととなり、自分の裡に秘められていたもの……個性の範疇に属する超絶レベルの力があることを、顕在化させた。
「それからですね」
リテシアが苛立った声で続ける。
「あ、はい」
「あなたの申し出のことです」
「申し出……ですか?」
エリアは首を傾げた。気がついたらここにいたので、リテシア様に何か言った記憶はないが。
「『常にそばにいる』のでしょう?『ずっと一緒』なのでしょう?」
エリアは目を見張った。確かに、それは、可能であればお願いしようと……え?
聞き届けて下さると?
「承認します。彼女が生き延びたのはあなたの責任、彼女の担当はもういませんからね。仕方ありません。今後、彼女の担当はあなたとします」
エリアは思わず笑みを作った。
由紀子ちゃん!
由紀子ちゃん。また、あなたのそばにいられるよ!
「本当……ですか?」
「そうする、と宣言してきたではないですか。自分で反故にするのですか?天使族の沽券に関わりますよ?」
「いえそのようなつもりは……申し訳ありません。でも、ありがとうございます。というかその……」
お詫びと感謝を一度に伝える言葉ってないものか。
リテシアは笑みを浮かべた。
「いいのですよ。その代わり、彼女の今後の人生は全くの白紙です。全て彼女が作り上げ、あなたがそれをサポートするのです。人ひとりの人生。大変ですよ。よろしいですか?」
「はい!」
エリアは元気良く頷いた。
リテシアがくすっと笑う。
「どうかなさいました?」
「しかしすっかり板に付きましたね。そのスーパーの制服姿」
「そうですか?」
エリアは、ちょっと照れた。
そう。母親も言ったが、彼女は病室から直接ここへ転移したため、スーパーの制服を着たままなのだ。
その後、“シンデレラ服”が再支給されたが、彼女は結局、制服のままで過ごした。
天に地の服、地に天の服。
あなたには、レジ打ち娘の姿をした、天使が見えますか?
天使のアルバイト/終
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