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【理絵子の夜話】差出人不明-1-

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 放課後の教室。
 がらんとした室内には、西陽が差し込み、あらゆるものがオレンジ色に染まっている。
 但し無人ではない。室内中ほど、セーラー服の娘が二人。
「なるほど。後々のことを考えると、そうか」
「だよ。そりゃ妥協したくないってのは判るけどさ。それはそれでお母様なりの『最良の選択』だったんだよ。親ってさ、あたしら幾つになろうと、どう成長しようと、いつまで経っても『子供は子供』なんだよ。秘めたる思いを消す必要まではないけど、ここは落ち着くまで低く構えておいて、その間に自分磨いておけばいいじゃん。そのほうが正々堂々と」
「後腐れがなくていいか」
「そゆこと」
「了解!やっぱりそうか。そうだよね。私も頭ではそうと判っていたけど、ココロの中ではすっきりしなくてさ。でもりえぼーに言われてすっきりした。ありがと」
「いいえ。どういたしまして」
“りえぼー”と呼ばれた少女はきらめく瞳で小さく笑った。
 黒野理絵子。14歳。中学2年生。
 幼さを残した小づくりな顔立ちに、きらめく瞳が人目を引く。学校中の男子の憧れ。
 背丈はどちらかというと小柄。陽光の中、少し紫を帯びて見える髪の毛を背中で束ね、緩くリボンで結わいている。
 教室の後ろのドアが無遠慮にがらりと開いた。
「何してるの?早く帰りなさい」
 志村(しむら)という女先生。生徒たちの人気はすこぶる悪く、年齢、容姿、言葉遣い、その他、彼らの評価を全て書き立てれば立派に名誉毀損が成立する。最も、平成の世に生を享けた生徒達にしてみれば、“高度成長期”など預かり知らぬ遠い過去。価値観の相違はいかんともしがたい。
「何時だと思ってるの?」
 教室から出ようとする彼女達に、志村教諭はさらに言った。
 生徒たちが最も嫌う行動のひとつ“余計な一言”である。しかも、理由の如何を問うわけではなく、詰問調、糾弾調。
 

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