アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-125-
バウンドし、再度飛び上がる……瞬間に強い腕が伸びて来、彼女の身体は動きを止めた。
細身に巻き付く筋肉質の腕はラングレヌス。
「良くやった」
彼はそれだけ言うと、彼女を“お姫様抱っこ”で引き上げ、甲板に下ろし、立たせた。
「レムリアは確保。マスト復位許可」
了解の旨ピンが来る。程なくマストが動き出し、帆膜を縮めながら元のように立ち位置。
何事かと見ていた街の人たちから拍手が沸く。そしてめいめい、そもそもの目的地へ向かって歩き出す。
相原が言う。
『準天頂の画像を見る限り黒ずくめは拘束された。島の皆さんは、黒ずくめが乗って来た船に乗った。すぐ操作できるらしい。あ、モールス入電。“あさひ丸”号より謝礼。お嬢さんありがとう。合流し救助活動参画を許可願う……船長どうしましょう』
『許可する。状況に基づき本船と役割分担して救助継続せよ』
『承知しました。アルゴトランスレーショントゥモールス。あさひ丸……こちら先ほどのメガネ男。救助参画歓迎なるも、現状、要救護者は海上漂流、陸上倒壊建造物内、ガレキに巻き込まれた、等が対象と考えられる。我らは共に船舶であるから、海上漂流者を共同で捜索いただければ妥当と考えるがいかがか』
相原の声を聞きながら操舵室に戻る。そこでレムリアには一つの迷いがあった。
この船は救命装置を持っている。このままこの地で臨時の病院にも出来る。
否。
動けるなら、動く病院。そしてこの災害の主体は津波、すなわち水。
レムリアはピンを打って割り込む。
「私も学の提案に賛成です。地の利ある方と共に捜索し、必要に応じ我々の救助救命リソースを投入できれば良いかと」
『共同で海上・海中の捜索に当たれ』
「了解」
レムリアの言葉はアルゴ号の総意となった。ただちに川を下り、気仙沼湾に戻る。一方島の方からは漂い燃えるガレキを右に左に躱しながら、こちらへ向かってくる漁船。
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