アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-127-
『この向こうか』
『どうする』
『飛べれば……』
男達の会話をちぎってピン2発。
『レーダスキャン完了。15メートル先コンテナ船座礁。その向こうに半壊家屋。家屋壁面温度107度』
『レムリア意識を探せ。家屋の中に誰かいないか』
相原が言い、同時にタブレットに画像が出る。
それは準天頂衛星が上空から捉えた現場。
火に囲まれて孤立している。コンテナ船があるので家への類焼はかろうじて免れている。だが、火の付いたガレキが順次海側から流れ着きつつあり、放っておけば家屋に達する。
壁面107度。中は?
「お住まいはまだ大丈夫のようです!」
レムリアは漁船に聞こえるように状況を伝えた。
「本当かえ!」
「ヤツには身重の嫁さんがあんだ」
慄然。タブレットが手から落ちるほど身体が震える。しかし現在ただいま、意識・思考の存在は感じない。それは……。
否否失神しているだけかも知れない。なおレムリアは遠隔視は出来るが透視は出来ない。
セレネさん、感じませんか?
足音があり、甲板から炎の海へ歩き出す男一名。ラングレヌス。両手に銃。レーザにレールガン。
「おい、あんちゃんどうするんだ?」
「彼は防火服です大丈夫」
レムリアはウソを付いた。環境ウェアの耐熱は500度くらい。彼は当然そこに頼ってなどおらず、己の不死身能力のみを信じて様子見を買って出たのである。
「向こうに行くのが面倒くせぇ。相原、どうにかしろ」
『レムリアと同じ要領で帆柱使って投げる』
間髪入れず答え。中央マストが寝かされ、彼が先端まで歩き、マストがグイと動いて彼をコンテナ船の向こうへ放る。
ピンがあり、彼の見ている景色がカメラ経由で送られてくる。船上のコンテナを溶かす800度の炎を越え、埋め尽くすガレキの中に盛大に落下し、水しぶきが上がる。
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