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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-129-

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『貨物船の船体を貫通し通路を作る。私が船腹を円盤状に切り取るから、至近にプラズマを炸裂させ、爆風で円盤を吹き飛ばせ』
 レーザで円盤を作り、その円盤を火の玉が作る風圧で動かして船体を左から右へ貫通させようというのだ。
『アイ』
『行くぞ』
 予行もタイミングあわせのカウントダウンもなかった。船長のFELがバチバチと火花を散らして船腹に円盤を描き、その部位にプラズマ火の玉が撃ち込まれた。
『来たぞ!レーザ貫通』
 それは船の向こう、ラングレヌス。
 その時。
『作戦待てい!』
 ラングレヌスが驚愕を声にし。
「人か!?」
 漁船で見ていた男性が指で指し示した。
「なんだ?」
 おじさん達の表情が、SFアクション映画を見る少年のそれから、驚愕ショックの凝固に変わった。
 極めて、ショッキングな、状況が、各人の視界に映じた。
 恐らく、船が炎に捉えられた時、パニックになった結果、この切り取った部位……貨物室に逃げ込んだのであろう、東南アジア系と見られる多くの船員の身体が、文字通り“どさどさ”転がり出てきた。
 鋼鉄製の船体が炎に長時間炙られていたのである。生存確率について書くまでもない。
「止まるな行け!」
 おじさんの中から声があった。
「そうだ、俺の死でお前が生きるならそれでいいってのが海の男よ。乗り越えて反対側もぶち破れ!」
『判った!』
『判った!』
 海の男達の進言に、双子の大男はコンテナ船のこっちと向こうから同時に声を返した。なお、この二人が“賞金稼ぎ”として世界を股に掛け、応じて多くの人死にに付き合ってきたらしいことをレムリアは承知している。
 穴開けが終了し、穴の近くへ帆膜を広げ、伸ばす。アリスタルコスと船長がその上を滑って穴のそばへ降り立ち、数人の遺体を引き出して中へ入る。レーザの閃光とプラズマガンの発砲であろう、火の玉が炸裂するパンという音。

 

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