アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-130-
彼らが進んでいった穴から小さな爆発のように煙を伴うガスが吹きだしてきた。
『貫通した。ラング、我々が見えるか』
『待て、生体反応あり』
ラングレヌスの声があり、レムリアの液晶にその旨の表示が出た。
レムリアは男達を追って同様に帆膜の上を滑り、死のただ中へ走り込んだ。
貨物室は学校の教室くらいの空間はあろうか、そこに累々と横たわる男達。隙間なく人体があるので、避けて通るが難しい。
「姫」
呼ばれて見上げると、アリスタルコスの巨体があり、引き寄せられ抱え上げられた。
貨物室を横切り、貫通した反対側へ下ろされる。脳波指示で液晶に生体反応位置を表示させる。
めらめら燃える炎に囲まれ、3階建ての鉄筋アパートが横倒しであった。液晶に建物の透視図が重ねられ、生体反応は1階押し入れに認められる。横倒しであるから、窓はほぼ天を向き、床面は直角に近い。揺れか津波か、建物が横倒しになった際、押し入れに“転がり落ちた”と推定された。
そして這い出せない。但し、押し入れの空間が安全な隙間。
窓に乗り、中を覗き込む。折れた柱やタンス等が折り重なって室内を埋め尽くし、反応の位置が見通せない。
レムリアは歯を食いしばった。まず行き着いて必要な処置をしなければならない。小柄な自分なら隙間隙間を通って多分行き着ける。
問題は帰り。構造を船コンピュータに把握させ、可能な限り破壊して真っ直ぐに出たい。
「壊れる危険が計算できませんか」
その問いに、相原の答えは瞬時であった。
『いや、壊すだけ壊して建物潰れる前に出てくりゃいい。また遺体袋を使う。袋を持って中に降りろ。次にワイヤとプラズマを下ろす。君と袋をワイヤでぶら下げろ。そしたら袋の中からプラズマで真っ直ぐぶち壊せ。出来た穴から家が潰れる前に引き出す。理解したか。頼むぞ大男』
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