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【理絵子の夜話】差出人不明-6-

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 ひらりとばかりにバイクの後席に身を乗せる。
 その間、ボーイフレンドが理絵子に目を見開く。
「げぇかわいーじゃん。なんだよお前のトモダチんこ?」
「うるせーな手ェだすんじゃねーよ。こいつの親父“四課”だからな」
 警察の捜査四課は暴力団や暴走族の担当。
「ウッソまじ?ってなんでお前そんな奴と……」
「かんけーねーだろ。いいから行けよ」
「おう。じゃぁねかわいこちゃん」
 ボーイフレンドは理絵子に投げキッスをして見せ、桜井優子に後頭部をしこたま叩かれてから、バイクを発進させた。
 
 理絵子は平日毎日5時半から7時半まで、学習塾に通っている。
 だから8時に待ち合わせを設定されても、別段親への弁解に頭をひねる必要はない。
 問題は彼女が少々方向音痴だということだ。
 4丁目の踏み切りはどこですか……誰かに聞けば恐らく簡単ではある。ただ、その場所に行くとなると、聞かれた側は警戒する。教える前にもう一度考え直しなさいと言われるのがオチである。
 散々迷った挙句、線路伝いに歩いて行けば良いと彼女が考えついた頃には、時計の針は殆ど8時を指す所だった。
 県道から線路へ出、カーブした線路に沿う細い道を、隣の駅に向かって歩く。
 県道の踏み切りがカンカン鳴り出し、銀色車体に街明かりをギラギラさせて通勤電車が駆け抜ける。タラコ色のストライプが巻かれていて妙に太く感じる。クラスのマニア少年に言わすと、このタラコ色は“オレンジ・バーミリオン”というらしいが、理絵子はこの色を好きとは感じない。落ち着きがなく、むしろ何か心をざわつかせるようなものを感じる。この路線は自殺者が富に多いと聞くが、ひょっとするとそうした影響もあるのではあるまいか。
 電車が走り去り、音が小さくなり、様々な色の灯火がひとかたまりに見えるサイズに遠ざかる。
 

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