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【理絵子の夜話】差出人不明-7-

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 電車から目を戻し、現れた状況に、理絵子はギョッとして立ち止まる。
 静かなのである。
 その通勤電車の終点近いとはいえ、都内であり、複線で本数も多い。周辺には家屋が隙間なく、軒を接する密度で建ち並ぶ。但し、どの家も塀が高く中は見えず、家屋内からの灯火も外までは漏れてこない。生活空間があるはずだが、まるでどの家も息を潜めているかのように、声や物音は聞こえない。
 心細くなって思わず見回すほど。見えるのは家塀に挟まれた細い道と。カバーが汚れて暗い街灯と。LED化されるのはいつですか。
 その街灯から、蛍光灯の唸るジーという音さえ聞こえてくる。
 走って逃げたいような気持ち。
 理絵子は約束を思い出し、かばんを両手で胸に抱えて歩き出す。走って逃げたい気持ちと矛盾するが、物音を立ててはいけないような気がするのだ。
 待ち合わせの踏み切りがカーブ線路の終わりに見えてくる。幅の狭い、歩行者専用の踏切である。
 そこは、下り線側は大きな家の裏側にあたると見え、人工の明かりは一切当たらない。
 一方上り線側は外壁モルタルのはがれた無人アパートであり、夜闇に沈んでいる。
 要するに踏み切りは全くの暗がりにあるのである。
 理絵子は月を求めて空を見上げる。しかし今日は三日月。とっくに沈んでしまった。
 なんで……理絵子は二つのことを同時に思い、ここに来たことを後悔する。
 ひとつは、これでは“自殺の名所”も当然だということ。余りにも寂しすぎる。余りにも暗すぎる。死ぬほどの思いを抱える人がここに来たなら、その思いを加速しこそすれ、逆はない。
 そしてもうひとつは、なんで自分はそんな場所なのに来てしまったのだろうということ。
 理由は判っている。それこそ差出人が自殺でもするのでは、という気配を感じたからだ。
 でもここに来て、それが間違いだったかも、と強く感じる。
 

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