【妖精エウリーの小さなお話】アイドル-03-
一方、妖精は基本的に虫と動物の相談相手。人間さんとコミュニケーション取ることは本来禁止。
但し、命に関わる話なら別。
……と、勝手に拡大解釈しまして。
「歌うことがイヤなのかと心配した」
「ううん。そんなことはない。歌うのは嫌いじゃないよ」
「なら良かった。……てなわけでヒバリさん。彼女は喉の調子がいまひとつ。ハチミツを分けてあげたいので、また後で……でいいですか?」
私はヒバリに問いました。
〈いいよ。後ででいいよ。また来るよ〉
空高くへ上がって行きます。
〈あの、巣へ行っていいですか?〉
ヒバリとのやりとりを待っていたミツバチが訊いてきました。
「ああ、ごめん。いいよ。あそこだっけ」
私は少し離れた雑木林の方を指さします。
〈そうです。木の穴です〉
野生のミツバチは木の穴に巣を作ります。だから似たような構造の人家の軒下や屋根裏にも巣が出来ます。
雑木林まで草むらを横断して行きます。200メートルはありましょうか。
「風がおいしい……」
涼は髪を抑えて言いました。
女に属する私が言うのもあれですが、絵になる女の子いるものです。青空と、草むらと、女の子っぽい仕草の女の子。
アイドルにしたいというビジネス側の気持ちも納得できます。
「変?」
「ううん、写真に撮りたいなって」
「そういうことか。楽しいけどね、怖いよ、ビジュアルばかりって。私の外見があれば中身どうでもいいってことでしょ。そのうちCGで適当に作られるようになるんじゃない?」
それは恐らく、彼女を宙に舞わせた一因を示唆しておりましょう。
テレパスであれこれ拾って言うことは出来ます。でも、多分、自分で考えて結論出すのが本来のあり方のはず。
「だったら、私みたいな翅持ちと出会う機会なんか無かったと思うよ」
私はそれだけ言いました。涼は目を見開きます。
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