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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-138-終

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 レムリアはガーゼでゆっくりと新生児の全身を拭う。巻き尺を使って身長測定。
「私の……あなた、生まれました。取り上げてもらいました……」
 それは、この子のために身を挺した夫氏への涙。
「あの、学……さん」
 母に呼ばれた相原は自らを指さしてどぎまぎ。
「え?私ですか?あ、はい」
「ごめんなさい、このお嬢さんがそう呼んでいたもので……あの、この子のへその緒を切ってくれないでしょうか」
「自分が、ですか?」
「ええ、あなたは主人の代わりに私の出産に立ち会って下さった。主人とは両親教室に通って練習しました。主人でも、同じようにしてくれただろうって」
 医師が取り出した鋏。
「学。この子の人生の旅立ちを」
「承知した」
 相原は、大柄な鋏を手にした。
 へその緒は文字通り命綱であって応じた太さと強靱さを有する。鋏が大柄なのは応じた力を出すため。
「おお硬い……切って、痛くは無いのか?」
「神経ないし、もう血が通ってないし」
「判った。じゃぁ力任せに」
 相原は何度か鋏を入れ、そして、へその緒は切れた。
「13時43分」
 レムリアは時計を見て言った。
「出生13時43分。アプガースコア9。身長46センチ。体重2702g」
 医師が読み上げ、データがプリントアウトされてくる。
 出生届に書き写し、医師のサインを入れる。
「まぁ後は私らでやるよ」
 レムリアは相原に言った。
「了解」
 相原は言い、出て行こうとし、イヤホンにピン。ピン2回。
「はい相原……アルゴ号はお産で動かせない。そっちは……ああ、ならすぐ行く」
 あさひ丸である。川を遡りアルゴ号のそばにいるという。
 相原はプラズマガンを持ち上げ、保持ユニットの扉を開いた。
「倒壊家屋にワンちゃんあり。ちょっと行ってくるぜ」
「はい。お任せします」
 3月13日13時50分。
 
アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~/終

 

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