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【大人向けの童話】謎行きバス-01-

 

●前書き

 
本作は2007年当時存在した自費出版専門の会社が募集していた懸賞で「奨励賞」をもらったものです。担当氏曰く「1000を越える応募があるので、1回目で奨励賞って相当なものですよ」……そうかいな。まぁ、「本という物体で世に出したい」人は多いわな。ちなみに賞金2万円でしたが、プリウス1台分の価格で出版して下さるとローン返済プランを出されました(そっちがメイン)。イヤちょっと待てよこの長さで本とかペラペラやぞ。丁寧かつ強力にお断りしましたら「ではお帰り下さい」と。あのね本を出したい人、丸善とか大規模書店の自費出版サービスなら50万円くらい、電子書籍にしてアマゾン置いてもらうならもっと安いから。ちなみに出版は宣伝媒体としてのマスコミと分かちがたく結びついているので、思想信条がそぐわない物は門前払いを食らいます。
ではスタート。
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-1-
 
 バス停にはただ『布引(ぬのびき)バス』。
 行き先として、『センター前』。
 発車時刻は、朝の4時37分という、モノスゴイ時間に、一本こっきり。
 しかも。
『運転日はお問い合わせ下さい』
 そのくせ、連らく先は書いてない。
 という、変なバス停は、学校前の坂を下りて、〝広域農道〟を二百メートルほど行った、鎮守の森、鳥居の前にぽつんと立っている。
 分からないことだらけなので、みんないろいろ勝手なことを考えて言う。いつしか付いた呼び名が、〝謎行きバス〟。
「雨の夜に待ってると〝トトロ〟が出てくるんだろ?」
「待ってる人も乗ってる人も見たことないぜ」
 親も先生も、だれに聞いても、何も知らないと言うだけ。
 仕方がないので、〝布引〟と付く交通業者をインターネットで調べると、大昔に短い間だけ営業した鉄道会社が出てくる。でもそこがバスを持っているわけではないらしい。
『センター前』じゃ、ありきたりすぎて何も出てこない。
 情報がなさ過ぎて不気味。そのせいか、変なウワサを立てる人もいる。
「乗せられると変なところへ連れて行かれて、帰って来られない」
「反対方向へ行くバス停も時刻もない」
 そういう、こわいウワサに限って、あっという間に広がり、いつしか、それが事実としてあつかわれる。
 だから。
「あのバス乗ってくるヤツがいたら、〝神〟だよな」
 クラスの男子達はそんなことを言い始める。つまり、神様と呼んでいいくらいの勇気の持ち主じゃないと、あのバスに乗ろうとなんかしないだろう……。
 まるでキモ試し。
「つまり雄一(ゆういち)くんには絶対ムリって事だ」
「むしむしくんと仲良くしてるのが一番いいもんな」
 
♪むしむし 大好き 無視して 泣き虫 弱虫 毛虫 はさんで すてろ
 

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