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【大人向けの童話】謎行きバス-02-

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 声をかけようとした雄一を見るなり、3人はそう歌ってはやし立て、ゲラゲラ笑いながら、教室を出て行った。
 雄一は悲しい気持ちになった。
 虫好きというだけで、なんで、こうも言われてしまうのか、わけが分からないのである。
 3年生までは仲が良かったのだ。ところが、4年の夏休みからこういうのが始まった。それが5年生になった今も続いている。
 きっかけは、多分、なんだが、みんなで学校の裏山に遊びに行った時のこと。
 70年前、戦争をしていたころに掘られた、ひなん用の穴、防空壕の中に入って、電子ゲームをしようと言い出したのだ。
 確かに穴の中ならすずしいだろう。
 でも、防空壕は古く、いつグシャッとくずれるか分からないので、入ってはいけない、ときつく言われている。
 おまけに、雄一の知識によれば、毒を持つ様々な生物がひそんでいる可能性がある。マムシやヤマカガシといった毒持つヘビ。ムカデにクモに、毒持つガの類。
 ついでに言うと、雄一自身は、みんなと同じようなゲーム機を持っていない。だから、入ったとしても、みんながピコピコやっているのを、ただ見ているだけ、になる。そんなのツマラナイ、というのもある。
 それもあって、やめようよ、と言ったのだ。
 返った言葉が、「お前、弱虫だろ」
「そうじゃなくて、禁止だし、変なのいるかも知れないし」
「やっぱり弱虫じゃねぇか」
「これまで何年もこわれてねーんだ。だからこわれねーよ」
「もういいよ。お前帰れよ。どうせゲーム持ってねーんだし」
「そうだよ。弱虫でゲームも出来ない幼いお子様は帰って結構」
「しっしっ」
 まるで野良犬のように追いはらわれ、翌日から始まったのが、書いた歌である。雄一としては、ツマラナイ、はさておき、、実際問題として危険であるから、そう言ったまでなのだ。
 

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