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【理絵子の夜話】差出人不明-15-終

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「まだあれに見られている気がする」
「かもな。俺が死神だったらやっぱりお前殺そうと思うもん。だってお前いたら悪巧み全部バレバレじゃん」
 理絵子はハッとして桜井優子の顔を見た。
「どうしたよ。俺何か変なこと言ったか?」
「ううん、そうじゃなくて……」
 理絵子は、自分の力が何物であるか判った時のことを桜井優子に話した。小学校2年、それこそオレンジストライプの電車の終点、国定公園・高尾山(たかおさん)に遠足で訪れた際、滝行の修験者にそれと言われたのである。
「その時言われたのは、決して人に喋るな。なぜなら人は不気味がるから。その力を意図して使うな。なぜならそれは自分のために使うものじゃないから。そして……何のためにその力が備わっているのか、それはその時になれば必ず判る。だから、その時まで言われたことを守りぬけ」
 理絵子は話した。そして今、彼女は思い至ったのである。
 なぜ、この力が自分に備わっているのか。
 そういう存在に引き込まれ、命を失う人が出るのを阻止するためだ。
 合点が行く。彼奴は、自分のこの自覚を阻止するために、今夜のこの瞬間を私に与えないために、私を亡き者にしようとした。
 理絵子は自覚を言葉にする。と、それに呼応するかのように風が吹き渡り、神社の中の森がざわめき、何かの鳥が不気味な声を出す。
「悔しがってる」
 理絵子は呟いた。それはそう、言うなれば彼奴の歯軋り。
 しかし今はもう怖くはない。彼奴が接近を図るならすぐに判ると自信を持って言える。
「線路に立つ子を無くす……それが私のなすべきこと」
 理絵子は言った。
 それは私なら出来ること。
 私しか出来ないこと。
「そうだな。それがお前の力の使い道として最も高貴な使い方じゃないかな。誰にもない力なら、一番高度な使い方をすべきだ。すなわち、愛と命だ」
 桜井優子が言い、そして続けて。
「なんてな」
 照れ隠し。理絵子は思わずぶっと吹き出し、次いで少女たちはあははと笑った。
 木立の間から覗くキラキラと輝く星々。
 理絵子は遠く、そして長い時間が始まった気がした。
 その踏切が廃止され、陸橋が設置されたのは、3ヶ月ほど後のことである。
 ただ、陸橋の下に花束が絶えることはない。

 

差出人不明-終-

 

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