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【大人向けの童話】謎行きバス-03-

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 それが、どうしてこういう展開になったのか、全く理由が分からないのである。今は9月だから、始まってちょうど1年過ぎたあたり、になるか。
 雄一のかたを、ポンとたたく手があった。
 ふり向くと、一学年上かと思うような背の高い女子、堀長(ほりなが)。雄一はクラスでも背が低い方なので、その高さはひときわ強く感じる。
「あんなのほっとけよ。すっげー評判悪いんだぜ」
「う、うん」
 雄一はためらいがちにうなずく。この堀長という女子は、家が近くて小さいころから顔なじみだから、であろうが、こうやって自分をかばってくれる。ありがたいと思う部分もあるにはある。しかし、実は堀長には悪いのだが、そういう気づかい、雄一としては少々困るのだ。
 
〝女にたすけられてるヤツ〟
 
「おー堀長雄一!」
「らぶらぶ~。それともお母さんかな?」
「堀長、小さなカワイイゆう君に、おっぱい吸わせてやれよ」
「うるせーぞてめーら!」
 堀長はどなって、教室の後ろのドアへとズカズカ歩いていった。
「うわ!プロレスラー恵(けい)がおそってきた!」
 連中が何事か、堀長をはやしたてながら逃げて行く。堀長はどなるが、追いかけるようなことはしない。
 ちなみに、雄一の名字は花村であって、堀長ではない。
 連中は、雄一が堀長と結婚(けっこん)し、名字を変えるという意味でそう言っているのだ。なお、堀長恵は堀長のフルネームである。
 ここで自分が、〝弱虫〟でないなら、堀長に対して、〝オレのことはほっておけ!〟と言うのが、カッコイイのだろう。
 でも、雄一は、堀長が口調と外見はさておき、性格そのものは、全くふつうの女の子であることを知っている。そんなことを言えば、彼女は、多分泣いてしまう。実際、小さいころは、自分の方が彼女を良く泣かせた。
 

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