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【大人向けの童話】謎行きバス-04-

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 ふと思う。自分が体の小ささをウンヌン言われて傷つくように、彼女も、体格のことをとやかく言われて傷ついているのではないか。他の女子より大きくて、連中が言ったように、もうおっぱいがおっぱいと分かる。
 自分が、〝女にたすけられているヤツ〟と言われ、気にしているように、彼女も実は、自分を助けるたびに何か言われて、それをイヤと感じているのではないか。
 できれば、自分を放っておきたいのではないか。
 それなのに。
 彼女は、自分を、助けてくれようとする。
 強くなりたい。雄一は思った。せめて弱虫と言われないように見返してやりたい。
 だったら。
 
 
「とびきり早起きして走る」。翌日から、雄一はそう言って朝の4時に家を出るようになった。
 有名なプロ野球選手が、「強くなるには走りこむこと」と、言っていたからであるが、目的はもう一つ。
 例のバスに乗ってやろうと思ったのだ。
 分かるのは時刻だけだから、毎日通うしかなかったのである。
 そして始めてから10日目。土曜日の朝であった。
 もやの向こうに、赤いランプと、ガラガラというバスのエンジン音。
 雄一は近づいて行った。バスは白い車体に青いストライプ。バス停にあったように〝布引バス〟と確かに書いてある。パッと見、ごくふつうの路線バスと変わらない。
 そばまで行く。バス停の前に確かに止まっており、車体の真ん中にはドアが開いている。ガラガラっとスライドして開くヤツだ。他に、前の方にも、折りたたみ式のドアがある。
 ドアから中をのぞきこむと、木のゆかに、色あせた座席が並ぶ。それは「昔の」という言葉がピッタリというか、かなりくたびれた、古びた感じを受ける。入り口ステップ左側には整理券発行機があるが、白い塗装(とそう)がはげはげで、アカンベェみたいに出ているはずの券も見えない。動いてないのか、始発だから券を出していないのか。
 

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