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【大人向けの童話】謎行きバス-13-

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 その座卓の下。いっしょに出てきた、
 ヒモ……じゃない。
「あ~あ~あ~!」
〝あられもない〟という表現は、こういう時使うのだろうか。こわれて勝手に水がもれる水道のじゃぐちのように、尚子さんの口から、悲鳴があふれた。
 
 
「ほお~」
 センター長が〝ヒモ〟をじっと見つめた。
 ヘビ。ただし、大蛇(だいじゃ)ではなく、その長さ雄一のうでよりも短い。赤地に黒のシマシマというか、まだらというか。
 舌をぺろぺろ。元気である。
「わかるかい?」
 センター長は雄一をふりかえった。
 種類は何か、という意味だろう。だとしたらわけない。
「ジムグリ……ですね」
「ヤマカガシでは……」
「じゃぁないですね。ヤマカガシなら赤いほうが斑点(はんてん)になりますし、アゴの下が黄色っぽいです。こいつはジムグリの幼体です」
 雄一は安心してジムグリの幼体、すなわち子どものヘビをひょいとつかんだ。ちなみに、ヤマカガシは先にも書いたが毒ヘビと考えた方がよい。雄一は経験で区別が付くので、平気でつかんだだけ。
 なれない人はまねしないこと。
 ジムグリは最初身をくねらせ、じたばた暴れたが、雄一が首の下に手をそえ、指先でなでるうち、すっかり慣れたのか、右うでにクルクルと巻き付いた。
 左手にナナフシ、右うでに幼なヘビ。
 尚子さんの悲鳴再び。
「む、む、む!へ、へ、へ!」
「虫もヘビもイヤだと」
「あ、はい」
 ナナフシは木にもどす。その間にセンター長が座卓をセット。
 問題はジムグリ。居心地がいいのか知らないが、うでに巻き付いたまま、じっとしている。
「ちょっと外へ行っても……」
 雄一はジムグリを指さして言ったが。
「ああ、まぁいいじゃないか。そのままで。尚子さん、それそこへ置いてもらえますか?」
 尚子さんは部屋に入らず、ろうかから部屋のすみにお盆を置いた。ヘビと同じ部屋にいることすらイヤ。そんな感じ。
 

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