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【大人向けの童話】謎行きバス-14-

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 そこへ佐伯運転士。
「どうかしました?ああ、出ましたか。ほぉ、雄一君はそういうのも大じょうぶなんだ」
 そう言って笑う佐伯運転士を見るや、尚子さんがササッとその背後にかくれた。
「毒はなさそうですよ」
「そういう、そういう問題じゃないです~」
 尚子さんはくちびるが真っ青である。よほどコワイと見える。
 そのまま、佐伯運転士を盾(たて)のようにして、後ずさりしながら退室。
「あらあらあら」
 佐伯運転士も引きずられ退室。
 ふすまがビターンと大きな音で閉まり、ついで、ろうかを走り出す音。
 センター長はゆっさゆっさと体をゆすって笑った。
「尚子さん、あれでも慣れた方なんだよ。ここは見た通り山里でしょ。最初のうちはね、こっちにカエル、こっちにクモって感じで、そのたびにあっちでキャー、こっちでキャー、ってね。悲鳴でどこを歩いてどこに行ったか、分かるくらいだったんだから。おっと、冷めてしまうな。座って座って。ヘビ君もいっしょだ」
 センター長は、座卓の上に、ご飯一式が乗ったお盆(ぼん)を置くと、雄一の向かい側にあぐらで座った。
 そして、その尚子さんが持ってきたカサを、座卓の上にさしかけた。
「これは?」
 雄一はたずねた。部屋の中でカサ差してご飯食べるほど、きみょうな光景はあるまい。
 オマケに、うでにはヘビがいるのだ。
「樹液が落ちるのでね」
 センター長は当たり前のように言った。
「なるほど。……あの」
 雄一は湯気立つ麦ご飯をじっと見た。
 とつぜんの、しかもマチガイ訪問なのに、ちょっと申し訳ない気もするが。
「じゃぁ、いただきます」
「はいどうぞ」
 割りばしを割る。クリ入りのたきこみご飯、おみそしるに、なめこと大根おろしの和え物、シャケの切り身。
「そのクリは山で取ったものだ。固いかも知れないが味はいいはず。なめこはセンターで育てたものだよ」
 

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