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【大人向けの童話】謎行きバス-20-

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「まずはプールかなぁ」
〝生徒〟から、な~んだというあきらめの声。
「雑木林はあとで。だめかい?」
 雄一が言うと、口をとがらせていた生徒は「うん」とうなずいた。
「決まったようだね。じゃぁみなさん朝のあいさつ会を始めます。おはようございます…」
 子ども達が、おはようございます!の大合唱。
 今から始めるの?と、雄一はおどろき半分、感心半分でセンター長を見上げた。これがたとえば自分の学校の朝礼だったら、子ども達が声を出した時点で、「静かにしろ!」だし、自分のしょうかいなんか、後回しだ。
 もっとも、それ以前に、ヘビをうでに巻いて朝礼に出ることはないが。
 そのヘビがもぞもぞ動く。巻きついていた体を解き、首をのばす。
 何か探している?
「……今日は由美さんがクラブの練習で学校に行っているので、帰って来るのは5時、どうしたね雄一先生」
 雄一はしゃがみ、うでをゆかに付けた。うでから出て行くなら、いつでもどうぞ。
「ヘビが動くかね?」
 センター長がいっしょになって姿勢を低くし、雄一の視点から、ヘビの見ている方向を見る。
……それは、学校であれば、朝礼の最中にとつぜん、校長が体育館のゆかでハイハイ、ということになろうか。
「何か見つけたようです」
 言って程なく、ジムグリが、うでからはなれた。
 このヘビが捕食(ほしょく)するのは、主として地中のモグラやネズミなど。
 そもそもジムグリという名前自体〝地もぐり〟から来ている。
 センター長は子ども達に向かって、指を口に当て、シーッとやった。
 はう、という声が、尚子さんから上がる。
「ね、ねずみ……」
 かすれた声で、おそるおそる指先で差し示す。どうやら尚子さんは、〝小さくて動くモノ〟は基本的にダメらしい。
 雄一は尚子さんが指差すその方向に目を向けた。するとなるほど、タタタタタと、小さな足音を立ててカベ沿いを走る野ネズミ。
ジムグリが、動いた。
 

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