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【大人向けの童話】謎行きバス-22-

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 雄一は言った。それは単なる肉食動物の〝捕食〟が、人の目の前で行われた。ただそれだけ。
「かわいそうかどうかは?」
「ああいうの、見慣れちゃってますからね。それに、ぼくらが肉や魚を食べるのと同じだし。ただ、かわいそう、という気持ちは、そう感じなくなったら終わりかな、とは思ってます。だって、自分たちだって命を食べて生きてることを、何とも思ってない、てことになるわけですから」
「ほぉ」
 雄一の意見に、センター長はまず大きくうなずき。
「なるほどな。ちなみに、雄一先生は、今朝のセンターの朝ごはん、シャケの切り身を、骨以外とてもきれいに食べました。ぼくはこれを大変大切なことだと思いました。なぜでしょう。…ではこれを今日のみんなへの宿題にしたいと思います。答えは、雄一先生と、いろんな虫を見ながら考えてみてください。では解散!」
 センター長は言い、手をパンとたたいて、歩き出した。
「ゆーいちせんせー」
「せんせー」
「せんせープール行くの?」
 弟みたいなのがたくさん集まってきた。
 
 
 暑くなったので雄一はジャージをぬいだ。白一色の体操着、半そで半ズボン。
 5~6人の下級生を連れて、雄一がまず向かったのはプール。
 プールサイドに盛られた土は草ボーボー。のびたススキの葉には赤トンボの一種、アキアカネが飛んだり止まったり。プールはのぞきこむと水草が生え、いろいろ動くやつらがおり、プールのおもかげは全くない。
……待て。
 雄一は気付いて土の上に手を付き、水の中をじっと見つめる。
 その丸み。サイズ、泳ぐ速さ。
 少~し緑っぽくも見える、なめらかな黒い背中。
「ゲンゴロウ」
「うん、いるよ」
「せんせーこれ使う?」
 男の子が〝網(あみ)〟を差し出す。とはいえ、店で売っているものではなく、竹ザオに針金ハンガーを輪にして取り付け、女性用のストッキングをかぶせた手作り。
 

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