【大人向けの童話】謎行きバス-24-
「空気の気と、入場門退場門とかの門ってあるでしょ。くっつけて気門。単なる穴なんだけどさ、昆虫はその穴がお腹にいくつか開いてて、そこで息してるんだ。あとでバッタでもつかまえて見せてあげるよ……って、いるじゃん」
近くのススキの葉っぱにショウリョウバッタ。
大形で長い、緑または茶色のバッタだと言ったら心当たりのある人も多かろう。オスメスの体格差が非常に大きく、オスはキチキチと音を立ててすばしこく飛び、メスは飛ばない。
のが、常識とされていたが。
今雄一が発見したメスのショウリョウバッタは、図鑑がウソ付きと思うくらいに良く飛んだ。
「まただ」
雄一は思わずつぶやく。21世紀になった辺りから、こういう〝良く飛ぶメスのショウリョウバッタ〟が増えている気がするのだ。それより以前は、一生けんめい翅を広げてバタバタしているが、容易につかまる。そんなのばかりだった。
温暖化で飛ぶ力が付いてきたのか?
とはいえ、まだまだオスほど飛行能力がないのは確かである。網を使わず、次はつかまえた。
「ほい」
翅をめくってお腹を見せる。相手がメスだけにスカートめくりしている気もするが。
「お腹に点々があるでしょ」
「うん、あ、ふくらんだりちぢんだりしてるね」
「この点々が気門。オレらは鼻から息するけど、こいつらはこの気門の点々から、そのふくらんだり縮んだりに合わせて、空気が出入りする。だから」
※これはトノサマバッタ
雄一はショウリョウバッタの頭を水の中につっこんだ。
「あ、死んじゃう」
「大じょうぶ。息してるのお腹だもん。オレらフロに入って首までつかっても、頭だけ出てれば大じょうぶでしょ?それと同じで、こいつらはお腹さえぬれなきゃ大じょうぶ」
「ふ~ん」
「つーても、虫にとってはエライめいわくだぁね。はい、ごめんよ」
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