【大人向けの童話】謎行きバス-31-
ヤマカガシ。二〇世紀の末まで、無毒と言われた、ほぼカエル専門に食するヘビ。
その目はくりっとして丸く、そのせいか顔立ちは可愛らしい。スズランの花といっしょで、ぱっと見て毒があるとはとうてい思えない。
「え?じゃあ……」
「毒ヘビですよ。ハブより強いというのが最近の説です」
雄一は言いながら、ガケの中程に足をかけ、じっとしているヤマカガシの背後に手をのばした。
「どうするんだい?」
心配そうなセンター長。ちなみに、ヤマカガシは舌をべろっと出して動かない。死んだフリ。
「基本的におとなしいヘビです。よほどいじめつけない限り、キバを立てたりはしません」
「だからって……」
「つかまえてお見せします。ちなみに、かまれると、そのうち、びぃんとしびれてきて、ずきん、ずきん、としてきます」
「かまれたことあるのかい?」
「小さいヤツですけどね。半日ズキズキしてました。でも大じょうぶ、それまではふつうにつかまえて遊んでましたし、その時は、ちょっと、ひどいことしましたからね」
雄一は言い、自分の背よりも長いそのヘビの、首根っこをひょいとつかんだ。
おおっ、という声があがる。ヘビはあわてて体をくねらせ、のたうち、雄一のうでにからみつき、口をカッと開いた。
その表情はまさに肉食のどうもうさ。
「おい雄一君!」
センター長の声が、心配する親父のそれに変わった。
しかし、雄一は平気である。この辺は経験だ。なお、雄一はかれこれ十ぴきからのヤマカガシを手づかみした経験がある。だから、体であつかいを覚えているのである。でもそれは、毒ヘビとされていなかったから出来た話。今はちがう。
雄一はヤマカガシを持ってガケから降りた。
★死亡例もあるので、絶対に真似してはいけない。これは青大将の子供
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