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【理絵子の夜話】見つからないまま -04-

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 自分の家族以外では彼女にしか話していない、自分の特質……特異能力に関わる話だ。
 まずはその拝み屋の排除ということになるだろう。そして次は、そのおばあちゃんの変化についてだ。
 実は理絵子自身、おばあちゃん云々の部分を聞いて“ピンと来る”ものがあった。
 これは医学で解決できる話ではない。
 ただ、引き受けて自分だけでどうにかなるかというと、自信を持ってイエスとは言えない。
 そういうことに能力を生かしたことはないので、どうなるか判らないからだ。
 但し、良くあるその手のテレビ番組みたいな、大げさな儀式をする必要はないとは思う。
「やったことないから、保証はできないけど。私で何かできるなら」
 理絵子は言った。そんなことを相談できる人間は、そうそうはいないだろう。
 断る理由はどこにもない。
「悪いな、ごめんな、恩に着る」
 桜井優子は言うと、テーブルに両手をついて頭を下げた。
「そ、そんな大げさだよ」
 理絵子は慌てて言った。
 
 
 喫茶店を出て桜井優子の家へ向かう。
 彼女の家は、新興住宅地の最も奥、細い道を突き当たった場所にある。
 土塀で囲われた大きな平屋で、二階建てにせずとも面積充分、を如実に物語る規模である。資産家一族と聞かされているが、なるほどもっともとうなずける邸宅だ。
 道を行き着く。門の前、車寄せスペースにライトバン一台。
 ナンバーは千葉、ドアに宗教法人云々宗と書いてある。
 木の焼ける匂い……護摩焚き(ごまたき)か。
「くそったれが」
 桜井優子はライトバンのドアを蹴飛ばすと、門扉の右方、潜り戸をカギで開けた。
 日本庭園。
 手入れが行き届いており、すなわちお金もかかっている。欲に目のくらんだ宗教法人某が狙っておかしくない。
 

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