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【大人向けの童話】謎行きバス-33-

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 まぁ、知らないならそう感じるだろう。雄一は思った。ヘビ以外でも、昆虫ではない虫類、特にゲジゲジやアシダカグモといった、〝第一級〟の不快害虫を追いはらうと、良くこういう目で見られる。
「良くいるの?」
 雄一は子ども達にきいた。
「うん」
 答えた男の子は3年生くらいだろうか。
「基本的には、ほっといてやって。でも、ボールが飛んで行ったとか、どうしても近づく必要がある時は、地面をドンドンけったり、手をパンパンはたいたり。そのしんどうでまずにげる。死んだふりしたら、ボール取るのは少し待って別の遊びを。そうすれば気が付いたころにはにげてるから。絶対やっちゃいけないのは、どつき回したり、ぼくがやったみたいにとっつかまえること。あれは色々やってみてのコツがあるので、こうすれば安全って一口に言えない。大体、さっきつかんだ首根っこだって、皮ふから毒出てるからね」
「うそ!」
「わ、わかりました」
 男の子達は、雄一の見せた手のひらに目を丸くし、たじろぎながら、敬語でうなずいた。
「すいません石けんで手を洗いたいんですけど」
 雄一はセンター長にきいた。
「ああ、いいよ。おいで案内しよう。さぁみんなも手洗いだ。おやつにしよう」
 おやつ?雄一がしせつの時計に目をやると、10時半近く。午前の間食タイムという事か。
 
 
 午前中残りの時間は、しせつの菜園に飛んでくるチョウを観察した。目立つのはキャベツとブロッコリーに来るモンシロチョウ。ミカンの木にはアゲハの仲間。
「コオニユリに止まったアゲハは、花のみつを吸うのに夢中になるのか知らないが、たやすく手づかみできる」と言ったら、面白がってみんなやっていた。ちなみに、ついでに、念のため、野菜類の根元を少し掘って確認したところ、モンシロチョウと同じアオムシでも似て非なるモノ、ヨトウムシのイモムシがゴロゴロ出てきたので、センター長と相談して処分した。このヨトウムシ、ヨトウガ、というガの幼虫のことで、夜行性。昼間はエサにしている葉っぱの根元や土にひそむ。漢字で夜盗虫と書くが、一カ所にたくさん卵を産む上、サナギになる直前には、信じられないほど食欲を発揮し、一晩で畑が全めつという事態もあるとか。まさに畑の作物を〝夜盗(ぬす)まれる〟のである。
 

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