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【大人向けの童話】謎行きバス-39-

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「行こうよぉ」
〝隊員〟の一人が、雄一のソデを引っ張った。彼らの目的はカブト・クワガタだ。
「はいはいごめんよ」
 雄一は、コガネグモの背中をチョン、とつっつくと、せっかくの巣をこわすのも悪い気がするので、遠回りして、林のおくへ進んだ。とつぜん指でつつかれたクモは、巣をワシワシと前後にゆすって、威嚇(いかく)。
 やってるやってると思いながらさらに行く。太陽の方に向いたゆるやかな下り坂。ジョロウグモがごうかいな3重網を張っている。そのまま行くと頭にひっかかるので、ごめんよとこわしながら探検隊はさらに行く。
 樹液のにおいがしてきた。
「あ、あれ!」
 隊員が声を上げ、前方を指さす。
 その指の方向、木の幹のかなり高いところ。ひらひらするむらさき色。
 幹に止まっているオオムラサキ。日本の国チョウ。
 連中は樹液を吸う。従ってそこには当然。
「あ、あれ」
「カブトムシだね」
「やったっ!」
 隊員達から声が上がる。相当に高い位置だが、網をのばせば届くか。それとも、木の幹をドカンとけってみようか。
 向かって進む。
 その時。
 ブウンという、模型飛行機のプロペラみたいな音。
 次いでカチカチ、という、小石を二つ打ち鳴らしているような音。
 雄一は知っていた。
「しゃがんで!」
 隊員に声を出す。
「なんで?」
「スズメバチ!さされるよ!動かないで。しゃがんで。姿勢を低く」
 雄一は言い、自らもしゃがんで、そうっと頭の上を見上げた。
 巨大なハチが空中にうかび、見張りのヘリコプターみたいに止まっている。
 オオスズメバチ。世界最大のハチ。
 さされれば、大人でも死ぬ。非常にこうげき的な性格で、飛べば時速キロ以上は出せる。
 こんな足場の悪い山の中、子どもの足でにげ切れる相手ではない。
 スズメバチはしばらくカチカチ音を立てながら空中にいたが、雄一達がじっと動かなかったせいか、やがて飛び去った。
 

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