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【大人向けの童話】謎行きバス-40-

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 連中は、なわばりに入ろうとする者を見つけると、まずその行く手に現れ、人間が歯をカチカチ鳴らすのと同じように、アゴをカチカチ鳴らす。
 警告なのだ。『それ以上接近すると、ブスリとさすぞ』
「ねぇせんせえ」
「まだだめ」
 雄一は、見張り役であろうか、そのハチの行く先を追ってみた。
 すると、カブトムシたちがくつろぐ昆虫食堂の向こうに、ラグビーボールみたいなシルエット。
「カブトのいる木の向こうに、大きな丸いのがあるの分かる?」
 雄一は背後で待機している隊員に聞いた。
「え?……あ、あれってひょっとして巣?」
「そう。ここはダメだ。近づいたらおそわれる」
「え~?せっかくいるのに……」
「死ぬよ」
 雄一は言った。これだけは、これだけは絶対ダメだ。ちなみに、スズメバチは土の中に巣を作ることがある。そうなると巣は見えないので、〝カチカチ〟に気付かなければ、とつぜん大集団におそわれる。ということも起こる。
〝たかが虫〟……そんな決めつけは、このハチには通用しない
「死ぬ…」
「ああ、スズメバチにさされてってニュース聞くね」
「そう。命がけで取るほどのものかい?…他の木を探そうよ。そのしゃがんだままゆっくりバック。走っちゃダメ、坂の下の方へ」
〝アヒル歩き〟で坂を下りる探検隊6名。
 坂の下は日かげで、小さな流れがあり、少しひんやりしている。
 と、流れの中を動く赤いもの。
 雄一はそれを秩父で見ている。
「カニがいるよ」
「うそ!」
 見つけられない隊員に、網のサオ先で指し示す。
「サワガニ。川にいるカニ」
 サワガニはおどろいたように、小石のかげにササッとにげこんだ。
「あ、にげた」
「隊長!つかまえていい?」
「つかまるかな?」
 雄一は、意地悪兄さんの気持ちで言った。
 

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