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【大人向けの童話】謎行きバス-42-

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 カナブンは少し行った先のクヌギの木、幹の向こう側に止まった。
 そこに樹液が出ているのだろう。
 スズメバチがいないか気を配りながら、ふわふわした腐葉土(ふようど)の上を歩いて行く。
 ツンとする樹液のにおい。
「うわ、くさ~」
「そのニオイが、カブトクワガタにはたまらないんだって」
 そのニオイの強さに確信が芽生える。雄一はニコニコしながら、カナブンが止まった、木の幹の、裏側を、のぞいた。
 探検隊が、映画の中で見つける物は、これと決まっている。
「宝物発見!」
 隊員達に伝えると彼らは走ってきた。
「おあっ。すげー!」
 そこは昆虫食堂である。カブトムシがオス2ひきメス2ひき。ノコギリクワガタのオス同士がケンカ中。
「あっちも!」
 となりの木を見た隊員がさけび、走って行く。そこにもノコギリクワガタがいる。
「隊長、取っていい?いい?」
 ここから見ても分かる、きらきらした目、興奮をかくせない声音。
「もちろん」
 隊員達はそれぞれお目当ての虫に手をのばす。隊員数より虫の数の方が多いので、ケンカにはなるまい。
 雄一は近場の木をいくつか見回った。樹液が豊富なのは、このとなり合う2本だけで、他にはパッと見て分かる昆虫食堂はない。なお、この手の虫は、ふつう夜行性と言われているが、ここのように昼でもうす暗い林では、活動していることがある。また、そうでなくても、樹液の成分がお酒に近いため、〝よっぱらって〟昼になってもしがみついてる、というパターンもある。
 それと。
「あ……」
 雄一はカブトムシとケンカを始めたそのクワガタに、今度は自分が、目をかがやかせた。
 ミヤマクワガタ。
 単に大型でアゴが立派、というだけではない。胸の後ろがグッと強く出っ張っており、非常に、〝いかつい〟男性的な外観をしている。
 
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(wiki)
 

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