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【大人向けの童話】謎行きバス-43-

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 カブトムシに負け、角ではじき飛ばされたところを、手のひらで拾う。このミヤマクガタは、どちらかというと昼に活動する。
まだケンカの興奮が残っているのだろう、6本の足を力んでふんばり、『なんだお前は!』とでも言っているかのように、アゴを持ち上げて威嚇。
 とはいえ、彼がいるのは手のひらの上である。そのまま水そうへご案内し、下ろす。プラスチックむき出しというのもどうかと思うので、腐葉土を手ですくって中に入れ、かれた枝に樹液をぬりつけ、止まり木の代わりに入れてやる。
 その時。
「うぉー!」
 他の木を見に行った隊員から、声が上がった。
「ちょーでけぇナメクジ!」
「うそ、どれどれ」
 隊員達が走って行く。
「うぉ何これスゲー!」
「信じらんねぇ。隊長!これなんですかぁ」
 雄一に聞いてくる。ヤマナメクジなら相当〝長く〟なるが。
 木の幹にべたっとくっついてるそいつは、ちょっとちがった。
 見慣れた〝カラのないカタツムリ〟とは、スタイルがちがう。黄色がかっていて、小判形というか、空気がぬけてつぶれたラグビーボールというか。
 ナメクジの仲間だと分かるのは、触角(しょっかく)とか、目とか、その辺の構造。
 大きさ、手のひらサイズ。
「キイロコウラナメクジ」
 雄一は言った。
「へぇ……」
「黄色い甲羅(こうら)を背負ったみたいなナメクジだから。外国から入ってきたんだ。これでも最近は少なくなってるんだってよ」
 触角をつついてやる。〝いやーんなにするの~〟とばかり、ナメクジが身をよじらせて触角を引っこめる(まねしないで下さい)。
 そのそばを行く異様な生物。
「うげっ!」
 隊員の一人が後ずさる。そいつはアズキ豆程度の体から、糸みたいな細い脚が何本ものびている。脚が長すぎることを除けば、コソコソした動き方と共に、クモそっくり。
 ちなみに、脚を全部広げれば、多分これまた手のひらサイズ。
 

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