【大人向けの童話】謎行きバス-45-
ちなみに、茨城(いばらき)などではゴキブリのことを実際にコガネムシと呼ぶ。この歌の作詞者、野口雨情は、茨城出身である。
「このコガネムシとはちがうんだ」
隊員がカナブンを指さした。カナブンやカブトムシはコガネムシ科である。
「うん。こっちのコガネムシは、そのかたくて、がんじょうな体が基本。それで身を守った。ハチは針でさすことを覚えた」
雄一は言いながら、顔の周りをまとわりつくように飛ぶヤブカを、手で追いはらった。
そろそろ虫よけスプレーが切れてきたらしい。気がつけば、足に何びきも。
「だからってヤブカに血をくれてやる気はないや。うひゃひゃ、いったんここ出てスプレーやり直そう」
雄一は、日が差しこむ明るい方へ、歩き出した。
12
雑木林を出ると、けずり取られた急しゃ面と、その下に広がる、かわいた草原。
急しゃ面から草原にかけては、大きな三つ葉とピンクの花のツル植物、クズ(葛)が、ズルズルびろびろと、文字通りはびこっている。
そのクズのツルを3本まとめてロープ代わりにし、探検隊はしゃ面を降りる。
足元からブンと音を立ててバッタが飛んだ。
力強く羽ばたき、かなりのきょりを飛び、クズがのびていない、土の上に降りる。
「なんかでけえ」
「トノサマバッタだよ」
「隊長網貸して」
網を持ち、隊員達が追って行く。しかしトノサマバッタの飛ぶ力は相当なものである。にげられ、こんどはこっちの方へもどってくる。
その時だった。
自転車に乗った子どもが3人ばかり、走ってくるのが見えた。
雄一はハッとした。
彼らが隊員達を指さし、何事か言ったと分かったからだ。
隊員達がバッタを追うのを中止し、こちらへ走ってくる。
その隊員達を自転車の一団は追ってきた。〝あおる〟というのか、追い立ててこわがらせ、喜んでいるとすぐに分かる。
トラブルだ。
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