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【理絵子の夜話】見つからないまま -15-

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 このマイナスの流れには意識して刃向かっていた方がよい……理絵子は自分に言い聞かせるようにそう思った。陰陽師なら結界を張って防御するところだ。
 先に立って歩く優子の祖父が、具合悪そうに咳き込む。さもありなん。
「じいちゃん大丈夫かよ」
 優子が祖父の肩に手を回す。理絵子は一緒になって祖父の身体に手で触れた。
 判る。祖父の身体から“吸い出される”作用が止まった。
「ああ、ああ、楽になったよ」
 祖父が言い、ちょっと笑顔を見せた。
「まずは荷物を置いといで」
 家の奥へ二人を連れて行く。増築したらしく、廊下は複雑に曲がっている。
 柱の色が新しい6畳間。
 部屋の中はがらんとしており、押し入れと窓があるだけ。
 窓からは海と太陽。
「ここを使ってな。お茶を淹れるから居間へおいで」
 祖父は言って歩き出そうとした。
「ちょっと待って」
 理絵子は思わず言った。
「ください」
 付け足す。
 振り返る祖父。
「一緒に行きましょう」
 理絵子は言った。確信があるのだ。自分から離れると体調を崩す。
 この“マイナス”の環境において、祖父は祖母のためにと気を張って頑張っている。だから多少体調の不調はあるが、病気などの症状は現れないのだ。
 だが、自分が来たことへの依存と、恐らくは祖母の状態悪化のせいであろう。疲労濃い表情からも判じるが、気力が萎えつつあるのだ。
 その状態で自分から離れれば、確実に“吸い出される”。しかし自分の周囲であれば、刃向かう気持ちの勢力範囲内であるから、そうはなるまい。
「何か感じるのか?」
 心配そうな優子。
「ううん、全然、ただ、おじいさま具合が悪そうだし」
 理絵子は言った。ウソの理由はこれ“全然関係ないことを考える”。このテの流れは、流れの存在を意識すると、そこに同調して入り込んでくる。
 

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