【大人向けの童話】謎行きバス-46-
けいたい電話……いや、間に合うまい。大体、ここがどこなのか、どうやって説明するのだ。
「隊長~」
半べその隊員達が雄一の背中にかくれる。自分のシャツをギュッとにぎる力の強さが、彼らのおびえぶりを物語る。
自転車の一団は、探検隊から少しはなれた位置に自転車を止め、降り立った。
年れい学年は自分と同じくらいだろうと雄一はふんだ。その意地悪そうな顔つきは、自分に何のかんの言ってくる、あいつらのあの表情に似ている。
「お前ら〝きのまま〟学園のヤツらだな?」
正面にいる、一番体の大きいヤツが、そう言った。
それはパッと聞いた限り意味不明である。が、センターの子ども達に対する、ひどい悪口であることは容易に予想がついた。
〝木の実〟に〝きのまま〟………
「今日はだれのお古かな?」
着の身着のまま……そう言う意味だと雄一は知った。
確かに、あれだけの子ども達だ。衣服に寄付されたものがあり、かなり古くなるまで着ているという事情はあるだろう。
だが、それは仕方のないこと。そこをつかまえ、バカにしてけなす。
卑怯(ひきょう)とはこういう事かと、雄一は知った。
「お前知らない顔だな」
正面の大きいヤツが雄一を指さす。いかにも自分の体の大きさ、強さににモノを言わせ、こわがらせる、そんな感じを強く受ける。
「あ、おいこいつらカブト取ってるぜ」
別のヤツが背後の水そうを指さした。まるで大きいヤツに言いつけてる子分か手下みたいだ。多分、こいつらはこいつらで、この大きいヤツの強さ大きさに便乗している口であろう。大きいヤツがいなければ、何もできないタイプにちがいない。
しかし逆に言えば、何かする時は3人がかり。
「てめぇらだれの許しを…」
3人してせまってくる。子ども達が、〝ここからこっち側はよそ者禁止〟という、なわばり意識を持つのは、良くあること。
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