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【大人向けの童話】謎行きバス-48-

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 そうだ!
 
 とっさの、それはまさにとっさの思いつきであった。
 雄一は手先にあるクズの葉っぱをつかみ、思いっ切り引っ張り上げた。
 複雑にからみあった、周辺一帯のクズのツルが、ごそっと持ち上がった。
 それはちょうど、食ってかかってくる3人の足元に、ロープを何本か、ピッとのばしたような形になった。
「うわっ!」
 勢いこんだ3人は、見事にクズに引っかかって転んだ。
 意表をつかれた上に、雄一がかなり高い位置までクズを持ち上げたせいもあるだろう。連中は、受け身を取れず、顔から生いしげるクズの中に落下した。3人そろって、うつぶせに地面にビターン。
「いてー」
「ちくしょー」
 両わきの手下二人が声を出す。方やアゴをすりむいて血を出し、方や必死になって、口の中に入りこんだ土どろをペッペとはき出している。
 その間に雄一は、手にしたクズをそのままさらにぐいぐい引っ張り、ぶっちぎった。
 ムチのようにブンブンふり回そうと思ったのだ。それはそれで古い映画〝インディ・ジョーンズ〟のまね。
 さぁ来やがれ。
 その時。
「ちくしょー!」
 真ん中の大きなヤツが、顔を上げ、半身を起こした。
 その鼻の下は真っ赤。
 鼻血である。起きるのにちょっと時間がかかったのはそのせいか。
 さらに鼻の下には、巨大なハナクソ……じゃない。
 マルカメムシ。
Dqm_uspvyaeptti
(マルカメムシ:Megacopta punctatissimum……撮りたくて探したわけではない)
 
 クズという草本(そうほん)はマメ科である。マメ科を好むマルカメムシは、当然、このクズにもよく来る。
「っだこりゃぁ!」
 大きなヤツは、鼻の下のマルカメムシを、そのまま指でつぶした。
 ぐちっ。
「あ……」
 何を言おうとしても手おくれだと雄一は認識した。
 見る間に、みるまに、大きいヤツの顔が変わってくる。
「なんだこれ。なんだこれ。おげ……クセェ。気持ちわりい」
 

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