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【理絵子の夜話】見つからないまま -21-

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「子どもがいたずらで入り込んだのかと。でも、行ってみると誰もいないんですよ」
「ありがちだよな」
 優子が感想を述べる。確かに“心霊体験談”なんかで良くある展開。
 問題は昼日中ということ。普通、そういうのは怖さ増幅を狙って夜に出る。
「夫とおかしいと話していたら、エレベータがチーンと。電源は入れてないんですよ。でも行ってみると、確かにエレベータがドアを開けている。さすがに怖くなって退散しました。
 それからです。庭で子どもの声がした、と思うと誰もいなかったり、窓ガラスをノックするような音がして誰もいなかったり。そして」
 思い出した恐怖に、祖母の体温が下がり始めるのを、理絵子は感じ取った。
 すぐ手を握る。これで大丈夫。
「安心してください」
「あ、はい。夜中にどうしても眠れませんで手洗いに起きました。そしてドアを開けたら……いたんです。女の子が」
 その、祖母が見たという女の子の映像が、理絵子の意識に浮かぶ。強い印象を伴っているので、記憶の映像を超感覚で感知したのである。
 女の子は小学校3年生くらいであろうか。赤いミニスカートをはき、髪の毛はゴムで留めている。顔はぼやぼやしていてよく判らない。
 その子は隠れんぼで見つけられた時のように、逃げるように走り去った。
 理絵子はその印象を祖母に伝えた。
「そう、そんな感じですね。それからはもう頻繁です。女の子と男の子。男の子はもっと幼いです」
 男の子は祖母の印象では5歳くらい。鼻水を垂らしており、手も顔も服も薄汚れている。
「男の子は動かず、ただ物欲しそうにじっと見てることの方が多かったですね。座敷童みたいに、ふり向くとそこにいる。でも、見えたと思った瞬間、見えなくなる。そんな感じです」
 

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