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【大人向けの童話】謎行きバス-52-

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 ぽーっと顔がほてって来る。自分がおそらく、〝耳まで真っ赤〟なのだと、自分で分かる。
 最も、そんな事を言うつもりはなかった。本当は、やっぱり見られるのはイヤだよね、とか言いたかったのだ。なのに、思ったままが口をついて出てしまった。
「へ……」
 由美さんはしゃがんだまま、雄一を見上げて、目をぱちくり。
 雄一はそっと、由美さんに目をもどした。由美さんが、おこらなかったせいもあるだろう。
 多分、このお姉さんならちゃんと話してくれる。教えてくれる。そんな気が強くしたのだ。
 だから。
「あのね」
 雄一は言った。声がかすれる。のどがギュッとしめつけられるような感じがする。
「はい?」
「その……教えてほしいことがあるんだけど」
「なぁに?」
「その、由美さんって、小学校の時とか、男子とかから、おっぱいのこととか、言われるの、やっぱり、いやだった?」
 雄一の質問に、由美さんは目をいっそう開いて、雄一の顔をじっと見返した。
「クラスでそういうことが起こってるの?」
 雄一はうなずいた。
「ぼくの近所の、小さいころからいっしょだった……幼なじみ、ってやつ?」
「……そうか。ちょっと待ってくれる?」
 由美さんは言うと、部活用であろう、スポーツバッグからバドミントンのシャトル(羽根)と、ラケット2本を取り出し、弟たちにわたした。
「使っていいよ」
 ラッキー!と、弟たちがそれを受け取り、クズのない場所まで走って行く。
「あの子たちに聞かせるには早すぎるからね。まぁ、ここ座って」
 由美さんは、ラケットのカバーをクズの上にしくと、雄一にも座るようにと、そこをぽんぽんとたたいた。
「その子、おっぱい大きいんだ」
「うん……」
 雄一はこしを下ろしながら、堀長恵が自分を助け、そしておっぱい飲ませてやれ、になる、いつものパターンを説明した。
 

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