【大人向けの童話】謎行きバス-54-
「ああ、ごめん、ごめんね。あのね」
なみだをふきながら、由美さんはけいたい電話を取り出した。
メールの画面。
〝みんな方法はちがう。でも、目的は全部いっしょ、生きるためです。どいつもこいつもムチャクチャ一生けんめい生きようとしてるんです。〟
どこかで聞いたような……あれ?
「これって……」
「そう、君の大えんぜつ。センター長がメールで送ってよこしたの。だから私、君が帰る前にと思って早めに切り上げて帰ってきたわけ。君と話したくてね」
由美さんはけいたい電話を閉じて、ポケットに入れた。
「ぼくと?」
「そう。センター長ものすごい興奮して電話してきた。これだ、これだよ、由美ちゃん見てやってよって。で、長いメールがどーん。君は、すごいね」
「すごい?そうかな」
「そう」
由美さんは言うと、少しの間バドミントンの弟たちを見た。
そして。
「このしせつ、5年生が一人いるけど、その上があたしなのね。大きな子がいないの。みんな、親が連れもどしに来たり、自分から出て行ったりしてね。大きいから、自分で行動できちゃうわけよ。
でも、その後の経過は警察から教えてもらうの。聞きに行くわけじゃなくてね、警察の方からわざわざ来るの。何でだと思う?」
雄一は首をかしげた。ただ、由美さんの悲しそうな表情から、ろくでもない答えであることは、予想がついた。
「亡くなりました。くわしい話を聞かせて下さいって」
雄一はびくり、と体をふるわせた。
「親の虐待で手おくれ、ってのもあるけど、多いのは自殺なの。ここは自分に合わない。相性が悪いと言うかな。かといって勢いに任せて外へ出ても、受け入れてもらえないし、自分自身、そのかんきょうが受け入れられない。
その結果、行く先がないって思うんだろうね。自分で自分殺しちゃう。センター長、大泣きするんだ……」
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