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【理絵子の夜話】見つからないまま -23-

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 縮こまる心につけ込み、入り込んでこようとする意識の動き。
 マジックミラーの向こうから見ているような視線。
 理絵子は、祖母の背中に手のひらを乗せると同時に、そのミラー越しの視線の方向……部屋の隅の天井へ目を向けた。私には全部見えている。犬にわざと姿を見せたでしょう。でも思い通りにはさせないよ。
 舌打ちといらだち。理絵子には判っている。連中は人の心に恐怖が生じない限り、マジックミラーのこちらには入っては来られない。
 だから出てくるのは夜だし、普通の人が昼日中にどうにかなることもないのだ。
 徐々に強まる、自分に対する、彼らの敵意。
「とにかく、まずはこの憑きものさんたちには帰ってもらわないと。このままじゃ真相が判らないし、その子どもたちもかわいそうです」
 理絵子は言った。
 
 
 夜11時。
 4人は同じ部屋に布団を並べた。
 照明は点けたままである。しかし、困難を任せた安心感と、これまでの精神的疲労もあろう、夫婦はすぐに眠りに落ちた。ちなみに、祖母の体調には、その後特に変化は現れていない。
「で、実際のところはどうなんだよ」
 優子が訊いた。理絵子が夫婦を安心させるため、本当のことを言っていない。そう思っているのだ。
 確かに、言っていないこともある。但し、安心してもらうためであって、欺すようなことはしていない。
「ものすごく嫌われてる私たち」
 理絵子はまず言った。
「邪魔で邪魔で仕方がないみたい。どこか行け、排除してやるぞ。そういう意思表示をずっと受けてる。彼らも出てくる場所が欲しいからね」
 理絵子は言った。こういった連中の行動エネルギー…動機は、憎悪と怒り、嗜虐性、そういった部類である。だから、相手の恐怖する様が好きであり、そこにつけ込む。
 

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