【理絵子の夜話】見つからないまま -24-
救われない連中だと思う。意図を果たしたところで得るものは何もないのだ。そして最後には結局、力任せに排除される。
排除されると、その悔しさも手伝って、また被害者を捜す。
堂々巡り。
「このハイエナゴキブリ連中の目的って何なんだ?」
優子が訊いた。
「楽しければそれでいい」
理絵子は感じるままを口にしてみる。
「恐らくそれだけ。刹那的で怠惰な享楽主義者。でも、欲しいと思っている方向が破壊のもたらす刺激でしょ。刺激のもたらす快楽は、刺激のレベルを徐々に上げて行かないと、刺激を強くして行かないと、つまらなくなる。だから刺激では永遠に満たされない。行き着く先が刺激のためだけに破壊しつづける魔性の生命体」
理絵子は言い、以前出会ったそんな生命体を思い出した。
“死神”である。
「お前が踏切でやられそうになったあいつだな」
優子に当てられ、理絵子は頷いた。詳細は省くが、その時、理絵子の心を死神から現実に引き戻し、電車に轢かれる寸前だったところを助けたのが優子である。
それをきっかけに、理絵子は優子に自分の力のことを話した。
“動揺”がマジックミラーの向こうに生じているのを理絵子は感じた。彼らに取り、彼らと同類でより強い存在、死神と渡り合ったという事実は、攻撃を躊躇させる大きな理由になったようである。この小娘は強力だ。とても敵わない相手だ……。
作戦を変えよう。
「あんたらを力任せになんとかしようだなんて思ってないよ」
理絵子はマジックミラーの向こうに対して言った。
「そんな力もないし。ウソだと思うなら調べてごらん」
「おいおい」
理絵子の発言を、優子も、マジックミラーの向こうの連中も、“挑発”と受け取ったようである。
でも理絵子にそんな意図はカケラもない。
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