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【大人向けの童話】謎行きバス-57-

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 ただ、これは言えるだろうと思えることがひとつ。
「ああ、そのことですね、それだったら、〝男には負けると分かっていても戦わねばならない時がある〟ということを学びました」
 雄一のそのセリフに、センター長はクルマを止め、後席の雄一をふり向いた。
「え?」
 じーっとセンター長に見つめられる。ぼく、何かいけないことでも……。
 すると。
「かっこいい。すごいじゃないか」
 まじめな顔で、低い声で、センター長は言った。
「そ、そうですか?」
「実は、君が今朝ここに来た時、ああ傷ついてる子だなって思った。すぐ分かったよ。ウチに初めて来る子は、みんな傷ついてるからね。
 だからぼくは、君に無理言って引き留めた。君ならウチの子たち理解してくれると思ったし、ウチにいることで、君のその心の傷が、すぐには直らないかも知れないけれど、少しでも、傷のことを忘れられるかなって。
 でも、どうやらぼくの予想以上だったようだね。
 君がヤマカガシつかまえた時のみんなの顔を覚えてるかい?あの後ね、みんな口々にぼくに言ったよ。君が助けてくれたってね。自分たちのために命がけで教えてくれたってね。もちろん、君がヘビのあつかいになれていて、あんな事お茶の子さいさいだった、ってのは分かってる。でも、ウチの子達にとって、自分たちのために、危険をおかしてまで何かしてくれる人がいる、ってのは、すごいショックだった…おっと、このショックは傷つけたって意味じゃないよ、感動したってことだよ。
 だってそうだろ?
 君が見たように、ふつうの子に、そうじゃないって言われて、いじめられるんだ。オレ達ってワンランク下なのか、と思わされてしまうさ。でも、君は、そんなウチの子達に、毒ヘビだから気を付けろ、と言ってくれた、実際に毒に触れる危険をおかしてまで、きちんと教えてくれた。そこまでしてくれれば、感動するのも当然だろう。君は、君がウチの子達にとって仲間であると、態度と行動で、示してくれたんだ。
 しかも、君はちゃんと、単純にお茶の子さいさいじゃなくて、そういう子だって事を、実際に意地悪な子に立ち向かうことで、証明してくれた。命がけは大げさかも知れないけれど、勇気を示してくれた。弱虫とんでもない。それでこそ男の子だとぼくは思うよ。
 ありがとう。ウチの子達は君との冒険で、目に見えないけれどとても素晴らしい宝物を見つけたと思う。それでなお、君が楽しかった、学んだというなら、ぼくにとってこれ以上うれしいことはないよ。学校やお母様には話したけど、ウチのしせつに、君の学校からキャンプにでも来てもらえないかなと思ってる。その時はまた、先生を頼めるかい?」
「はい!」
 雄一はうなずいた。
 自分の冒険は終わったけれど、なんかとっても、すてきなことが、かわりに始まった予感……。
 

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