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【大人向けの童話】謎行きバス-60-

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 堀長の横顔に、由美さんの、きれいだと感じた由美さんの顔が重なる。
 あんな風に、なるのかな。
 堀長が雄一の目線に気付いた。
「ど、どうしたの?私の顔なにか変?」
 堀長が顔を赤くした。
 でも、雄一は、顔が赤くなる気持ちには、ならなかった。
 女の子の顔をじっと見つめるなんて、人が見たらそれこそ〝らぶらぶ〟と言われるだろう。
 なのに、平気なのである。
 ふしぎなことに。
「ううん……ただ、元気なさそうな気がするから、教室までいっしょに行こうかと思ってさ」
「え、あ、ありがとう」
 堀長は赤くなってうつむいた。でも、赤くなった彼女は、自分からはなれたりせず、自分といっしょに歩いている。
 それは、赤くなった自分が、これまで彼女に取っていた行動とは、ちょうどぎゃく。
 味方になるとはこういう事なんだ、と雄一は理解した。
 だまって歩く。おしゃべりはそれっきり。でも、何か、〝いっしょ〟なものがぼくらの間にはあるな、とか思いつつ、学校にとうちゃく。
 うわばきにはきかえ、階段を上る。
 そして教室の戸を開く。
「いよっ!新郎(しんろう)新婦お色直しでご入場です!」
 二人そろって入ったから、であろう。例の3人組からそんな声がかかった。
 それは結婚式の〝披露宴(ひろうえん)〟で、およめさんとおむこさんが、いしょうを着がえて入ってくるところ。
「おめーら!」
 いつもの調子で、堀長がどなり声をあげた。
 そのしゅんかん。
「あいた……」
 堀長は、下腹をおさえ、しゃがみこんだ。
 体の力が入らないのか、そのまま、ゆかにペタッと手とひざをついてしまう。
「めぐ!」
 雄一は思わず声をかけた。
 めぐ。それは彼女の名前の漢字「恵」の別の読み方「めぐみ」から来ているあだ名。
 

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