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【大人向けの童話】謎行きバス-61-

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 メグという名前の魔女(まじょ)のキャラクターがいるので、そっちの名前で呼んで、と幼い彼女にたのまれた。それ以来、こいつらのからかいが始まるまで、ずっと彼女のことをめぐと呼んでいた。
 それが今、ポッと出たのだ。
「まぁおくさま、聞きました?めぐ、ですって」
「もう~らぶらぶでうらやましいこと」
 連中がおくさまごっこを始める。が、かまっている気はない。
 その間に、他の女子が、異変に気付いて来てくれた。
「朝から調子悪かったみたいなんだ」
「堀長さん、大じょうぶ?痛いの?」
 しゃがみこんで問いかける。堀長は目を閉じて歯を食いしばり、苦しそう。
 の、しゅんかん。
「あーわかった。お前〝せいり〟だろ!」
 3人組の一人が、大声で、言った。
 めぐが体をびくりとふるわせ、ぎゅっとちぢこまらせ、目をカッと開けるのが、雄一には見えた。
 その目から、ゆかの一点を見つめているような目から、ボロボロあふれて来るなみだ。
 雄一があの、ゲロをバカにされて泣きだしてしまった、〝大きいヤツ〟を思いだしたのは言うまでもない。
「せいり、せいり、ほりながせいり」
 歌い出す。
 その3人に、女子達が次々に目を向ける。
「ちょっと!」
「ひどいよ!いくらなんでも……」
 来てくれた女子の反応のしかた、おこり方が、ハンパじゃないことに雄一は気付いた。
〝せいり〟が何なのかよく分からない。でもめぐの傷つきぶりと、女子たちの異様というか、ただならぬ反応からして、女子は知ってるけど、男子には分からないこと。
 つまりおそらくは、おっぱい同様、ゴチャゴチャ言われたくないメタモルフォーゼのひとつ。
 しかし考えてみれば、連中のやってることは、やれアオムシが脱皮(だっぴ)した、サナギなった、てのをつかまえて、ヤーイヤーイ言ってるのと同じ。もし、現実の虫に対して、脱皮、脱皮とか歌ってるヤツがいたら、
 

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