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【理絵子の夜話】見つからないまま -32-

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 生き物たちが、カサコソ耳で聞こえる音を立て、ドアへ集まる。
「不気味な音の仕組みはこういうことか」
「そう、多分にわざとね」
 理絵子はドアノブに手をかけた。
 と、上からぬっと降りてくる顔より大きな黒いクモ。
 不自然に細長く伸びた8本の脚には、見て判るほど太い毛がびっしりと生えている。
 醜悪そのものの外観。
 クモが顔をもたげる。金色に光る8個の目。むき出された2本の牙。
 曰く、ここより先に行くな。
「案内してよ」
 理絵子はクモの意識と全く逆のことを言った。
「ムダだと判ってるでしょ。どうせ私は見つけるよ。別に君のことどうにかしようとは思っていない」
 理絵子は言うと、クモの背中に触れた。ひやりと冷たく、硬い毛がゴワゴワ。
 敵意は無い。映像が訪れ、過去が見える。大切なものを守ろうとして果たせなかった“無念”の残骸。
「大丈夫、ここで私を行かせても君の失態にはならないし、君が思うような裏切りにも当たらない」
 理絵子は言った。14歳の女の子が、自分の顔より大きな毛むくじゃらのクモを撫でている。それは、見える者には不気味な光景であるし、見えなければ、暗闇でドアに向かって独り言を言っているわけで、それもまた異様な光景である。
 クモから警戒の意識が消えた。
 と、同時に、異様な太い体毛が消え、巨大な姿もみるみる縮んで行く。
「点けてみて」
 理絵子は言った。懐中電灯が照らし出したのは、ドアに巣を張る小さなクモ。
「ごめんねありがとう」
 理絵子は言うと、クモを指先に載せ、巣を払った。
 ドアを開ける。油切れのギイという音がエントランスホールに響く。
 その響き方から相当広い空間だと判じる。ただ、奥行きはさほどでもないので、高さ方向に広いのだろう。案の定、懐中電灯を上に向けると、最上階まで吹き抜け。
 

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