« 【理絵子の夜話】見つからないまま -37- | トップページ | 【理絵子の夜話】見つからないまま -38- »

【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、魔法使い) -2-

 ぜんそく持ちなのである。
 ならば、自分が説明した方が早そうだ。
「福島にボランティアに行きました。諏訪君の元々の入院先は津波で利用できなくなりました。彼はその日たまたま検査で郡山の病院へ来ていて、そのまま臨時転院となりました。そこへ私がお手伝いに行った。そんな感じです。退院して学校生活に戻るに際して、郡山の病院も壊れていて大変なので、おじさまがいらっしゃる東京へお引っ越し。そういう流れです。ココとは思わなかった」
 ひとしきり喋った後、彼女はクラスの“異変”に気づいた。
 歓迎の声か、自分たちの関係を邪推して冷やかすか、どっちか来ると思っていたが。
 感じるのは困惑の念。隣同士に互いに顔を見合わせたり。
 どちらかというと拒否の念。
「あ、あの、体育とか見学になってしまいますが……よろしくお願いします」
 自分の喋るタイミングと考えたか、諏訪君はつっかえながら言い、頭を下げた。音量控えめなのは喉の調子とリンクしていよう。声変わりはまだかな、と思わせる。
「あ、うん、どうも……」
 男子日直の坂本が義務的に応じ、拍手。
 クラスメート各員から義務的な拍手が続いて起こる。
 その一連のぎこちなさ。
「じゃぁ、席は相原さんの隣の方がいいかな?」
 彼女は“視力はいい”と自己申告して窓際の一番後ろに座っている。諏訪君用とみられる空き机は廊下側一番後ろ。
「平沢(ひらさわ)、どけ」
「え?マジかよ……」
 平沢というのはクラス一背の高い男子生徒である。面長でのど仏が目立つ。体格に声変わりも手伝って胴太い低音。
 先期、すなわち2年生3学期に彼女が転入してきた時から好意を示しており、この3年生1学期の席は隣になって“涙流して歓喜”とこぼした。なお、彼女は居候先の男と婚約しており、その旨クラスにも公言している。彼の思いが叶えられる可能性はない。
「オレの悲願が……」
「なに、一生分の運を30分で使い果たしただけだ。気にするな」
 突っ込まれて、クラス中が爆笑。このホームルーム冒頭でくじ引き席替えをしたのだ。
「ごめんねぇ」
 彼女は言って口元に手をしてオホホと笑った。
「愛する人のためなら。仕方がないけど仕方がないよ」
 平沢は肩掛けカバンに腕を通した。露骨にしょげてうなだれるが、体格の分頭も大きく、その状況を模した絵文字のよう。
 次いで机を抱える。机ごと入れ替えるのである。机はSML3サイズあり、更にそれぞれ高さの調整が可能だが、ふたりは体格が違うので机のサイズ自体も異なり、応じた処置。

|

« 【理絵子の夜話】見つからないまま -37- | トップページ | 【理絵子の夜話】見つからないまま -38- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【理絵子の夜話】見つからないまま -37- | トップページ | 【理絵子の夜話】見つからないまま -38- »