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【理絵子の夜話】見つからないまま -38-

 
 岩場へ足を踏み入れる。二人はゆきえを追い、岩と岩の間を飛び移り、飛び降りる。
 そこは、足下には波で運ばれたのであろう砂が堆積し、回りの岩には、理絵子の肩の高さくらいまでフジツボがついている。
 つまり、潮が満ちるとそこまで水につかる。
〈そこだよ〉
 ゆきえの意志に基づき、顔を崖のほぼ直下、岩がごちゃごちゃと入り組んだ部分の下方に向ける。そこには入り組んだ岩に隠れるように、人が四つんばいでやっと通れる程度の穴。
 懐中電灯片手に中を覗く。
 すると、そこから上方へ向かって続く広い空間。
「こんな穴知ってた?」
 理絵子は言うと、中へ入った。
「いや、知らねえ」
 優子が答え、後から続く。
「へえ…」
 優子は感心したように声を上げた。中は立てるほど広いのだ。
 下から上へ向かう穴。その入り口は引き潮にならないと出てこない。
「ここに住んでいたの?」
 理絵子の問いにゆきえは頷いた。
 理絵子はそこから進むことを躊躇した。
 懐中電灯で中を照らす。足下に古びたノート。名前はひらがなで“ようへい”と読み取れる。
 そして奥の方にぼろぼろのズックと。
 そのそばに、棒状の白いもの。
 生きていた証。
「りえぼーその靴の……」
 優子が言いかけ、やめた。
 わざわざ口にすることではない。
〈何とか仕返ししてやろうとして必死だった。何でもやったよ〉
 ゆきえは言った。弟を食べさせるため、夜な夜な町へ出ては、強盗や盗みを働いて、その日その日を生きてきたという。
 しかし、ある日大雨でこの洞窟は水没し、二人は息絶えた。
「生活保護とか……」
〈知ってたよ!でも自分だけで何とかしたかったんだよ!お前みたいなカッコだけ不良と違うんだ!〉
 優子の言葉にゆきえは強く反応した。
〈お前はただ学校がかったるくてそんな格好してるだけだろう?帰れば飯も寝るところもあって、親も友達もいるじゃないか。何もしなくても生きていけるのをいいことに甘えてるだけじゃないか。違うか!こっちは……〉
 

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