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2019年4月 6日 (土)

【理絵子の夜話】見つからないまま -40-

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 拒否の気持ちと、待っている気持ちが、ない交ぜになっていたのはそのせい。
〈警察には奥の方まで探すように言います〉
 理絵子は言った。今、自分にできることは、それだけ。
 マンション前の公園に戻る。
〈さ、ようへい、帰ろう〉
〈うん〉
 姉弟がマンションへ入って行き、すぅっと姿を消す。
 そして多分、二度と出てこない。
 思いを遂げた姉弟の行くところは、当然、先に行った母のところ。
〈迷惑かけたね〉
 はなさんが言った。
〈いいえ〉
 理絵子は目を伏せた。自分がいかに幸せに暮らしているか、痛切に思い知った。
 家も、食事も、抱きしめてくれる腕も、泣かせてくれる胸もある。
 それが当たり前だと、それがどんなに素晴らしいことか、気付かない。
〈物の怪どもは消えちまったよ。あいつらはあいつらで、私らを守ってくれようという気持ちがあったのか、守るフリして何かしようとしたのか。私らも利用してたからお互い様かな?ああ、長かったなと思ったら消えたよ。さぁ。私も行くよ。もう今生に用はないさ〉
 はなさんは言うと、朝日の最初の光と共に、すうっとそこから姿を消した。
「さよなら」
 パトカーのサイレンが、遠くから聞こえてきた。

11

 捜査の結果、二人は3年前に行方不明となった13歳と7歳の姉弟であると判った。
 同級生のクラス名簿から住所が明らかとなり、黒背広の男は典型的な地上げ屋で、各地で強引に住民の追い出しをしていることが判明した。但し別の詐欺で服役中であり、獄中で再逮捕となったようだ。
 一方、はなさんの方は、鑑定で200年以上経過していると判明したため、官報“行旅死亡人”に掲載の後、亡骸は警察から大学の研究機関へ移された。その上で、民族博物館で保管されている村の捕物帖と照らし合わせた結果、7代将軍家継の時代である1715年(正徳5年)に不明となった、大工伊平の妻「はな」さんである可能性が高いことが判った。

(つづく)

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